「この里をいかに継承するか」
「この里をいかに継承するか」
今年は次々と台風が日本列島を襲い、平成7年7月11日小谷村をはじめ北アルプス山麓地域に大きな被害をもたらした線状降水帯が、全国各地の局部で発生し、想定外の大きな被害が発生しました。
一方で、連日35度Cを超える日々が続き、野外労働では、「昼休みを長くとる。」など働き方を変えざるを得ない事態となりました。また雨が降らず潅水施設のない農地はカラカラになり、我が家も、今春植えたアスパラの苗500本を枯らしてはいけないと、夏の直射日光をさけるため草を刈らず、草の中で競いながら成長するのを見守りましたが、地球的規模で気候がおかしくなっています。
平成6年10月30日開催の参議院関税貿易一般協定に関かる特別委員会(ウルガイラウンド特別委員会)に長野県コメを考える会会長として「減反政策で1/3の水田がなくなり、水の郷長野県安曇野から夕立が消えた。」と発言しましたが、水田から水蒸気が上がり、成長した入道雲は夕方5時ごろ決まって夕立を降らし、故郷の原風景である爽やかな夏の夕暮れの趣をもたらした。
当時の有様があってほしいと願うのですが、夢のまた夢なのかもしれません。
この10年間で農業者が40%激減し、「洪水調整など多機能をもつ水田を含む日本中の1/4の農地に所有者がいない状況である。」政府は驚くべき発表をしました。
土地本位制が日本の基本であったのに、荒れる一方の山林だけでなく、「農地へのこだわり」がなくなった気がしてなりません。
ウクライナ紛争に見るように、不安定な世界情勢の中で、各国とも「国民の食料は自国で」と食糧安全保障を国家の基本戦略に据えて、各国とも食糧自給率を上げるのに全力を傾注しています。現に自給率が日本と同レベルの40%であったイギリスでは、今は70%台と見事に再生しています。
消費力であげる人口増政策でも、日本は今年1億2330万人で世界の12位であり、大国ですが、世界で例を見ない少子化で、減少期に入っています。イギリスは、「人口増加は国の未来である。」との信念のもとに、1950年代に5000万人台が、現在は6680万人と増えて、人口増加政策の成功で、毎年増加し続けています。人口が増えた分を含めての自給率を大幅に伸ばしていることに注目すべきです。
50年前イギリスの農家に伺い小麦の収穫を手伝った際、「3人の娘はそれぞれ独立して『農業は継がない。』と言っている。後継者がいないので、近所の若い農業者に土地も無償で渡すことにしている。」と老農家夫妻は、囲い込み(エンクロージャー)で大規模化を進めてきたイギリスらしい発言をしていました。
北アルプス山麓安曇野地域は、清冽な水とたゆまない農業者の研究心で日本有数なコメの産地を築き上げましたが、米価の低迷や燃料・肥料など生産資材の高騰で農業経営は苦しく 、収益の高い農業経営に入れず、ここ10年で4割以上の農家が廃業した事実を重く受け止めています。
「農業をする人がいない。」この非常事態に、日本政府は、令和5年4月、農業経営基盤強化促進一括法を改正し、市町村に対して「10年後、だれが何を耕作するか。」を圃場ごとに報告する、とともに地域計画を創ること」を義務付けました。
『祖先から受け継いだ農地、子供たちは農業をやらない。暑い夏の草刈りだけでも大変だ。誰かに農業生産を任したいが、コメは赤字で農業の引き受け手がない。信頼できる人(農業法人)に任せたい。安心する新たな仕組みを創ってほしい。』と深刻な相談であります。
池田町では、昨年から国県の補助金で整備した農地さえ、高齢化で耕作放棄が危惧される町全体の農地保全と集約化、戦略的農業経営の担い手である農業法人の設置ための池田町農業振興協議会がスタートしました。
委員は、高い技術力を誇る長野県農業試験場を含む県、県議会、県中間管理機構、町農業委員会、町議会、JA、生産者、町で構成されて、「担い手の受け皿となる農業法人の設立、コメとブドウやリンゴ、アスパラ等の栽培、オーガニック農業、花とハーブの里にふさわしい花の栽培などを生産し、中山間地活性化と利便の向上を盛り込んだ長野県でも例をもない「行政が参加する農業法人の提案」であります。
開かれた協議会をめざすために、議会、農業委員会、町民、生産団体との意見交換も終了し、収益の上がる農業経営が実行されて、担い手である若い男女の社員の皆さんが、シッカリとした給与体制の中で、将来の独立も夢見ながら、家庭を構え生き生きと働く。」具体的な経営シュミレーションの仕上げに入っています。
『山高く、水清く、凛とした本県は、』から始まる長野県食と農業農村条例を起案した者として、自然とともに生きる農業の振興、中山間地の荒廃と集落崩壊をいつも念頭に行動してきました。
国や県で用意した地域振興策をいかに使って、数百年も里山を守り、農産物を育て、子育てをする地域で幾つもの役割を果たし、集落を守ってきた『百姓の皆さん(住民)』の形態は変わるかもしれませんが、住む人たちが、幾つの役割を果たすことが村を守っていく原点だし確信します。
『地域に若い人が少なくなり、子どもが村にいなくなった。』
長野県では、高校を卒業した18歳の多くの若者は夢を求め、勉学のために県外に出ます。しかし帰って県内で働く人は100名のうち38名程度です。
この傾向は深刻で、モノづくり県長野で、人財不足から廃業する企業も出てきています。
「地域の将来の担い手ある若い人たちの県内就職を促進しよう。」と岩手県や山梨県などの専門高校5年制の専攻科の設置や島根県では教育現場でのUターン政策などの教育の現場改革を進めています。都道府県ごと真剣な対策が始まっています。
長野県は、県民総意のもとに「新たな風の先頭を切ってほしい。」と心から願います。
そのためには、時代の大変革の時、現実をしっかりと把握し合い、「英知と人の人との絆を大切に、勇気と寛容さをもって、地域コミュニティ(里)を守り、継承するために、新しきを創る気概のもと、前への行動しなければ、愛する人と里は守られない。」と改めて思うのです。
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