ワサビの力
昨年7月3.11災害の傷跡がまだ色濃く残る岩手県の宮古市、大槌町、そして岩泉町にバス1台で伺った。
まだ瓦礫処理もできず、何もなくなった町の跡に重たい気持ちで岩泉町に入った。町の避難所住宅で、そこの子供たちに童話や本、コミック本を読んで元気を出してほしいと北アルプス山麓安曇野の暖かい激励の心から生まれた「星と虹と文庫」の受け渡し式を終え、深山の中に広がる自然づくりの「陸わさび農園」に案内された。
安曇野の代名詞となっている水ワサビの畑を見慣れている者にとって、山の山腹に、しかも松林の中に青々と育っている陸わさびに同行した三十数名の栽培希望者から驚の声が上がった。4haで700万円からの収入になるとの説明にまた驚かされる。
ワサビの抗酸化力は最も強いレモン(IC50値)の11倍もあるという大学のデーターを見せられる。ワサビは、奈良時代から日本固有の作物として自然に自生していた。徳川幕府のご紋としても有名なほど日本人には愛着のある作物である。
現在は、静岡県、島根県、そして長野県が主たる生産地で生産量は5000t/2005年だったものが2600t/2011年と近年激減している。
荒廃した原野や森林に手を入れ、中山間地域に生活する人の現金収入になればと2011年より北アルプス山麓地域で「ピリッとさわやかワサビ事業」を提案し、大北農業振興協議会、北安曇普及センターあげて育ててきた。
一年かけて栽培したわさびは、安曇野にある日本一のワサビ加工企業であるM社が全量買い取るというシステムを構築し、着々と準備し、4月には生産組合も設置される。
日本が参加を決めたTPP交渉がスタートするとき、中山間地を守るために、何かしら工夫したり、挑戦する精神がなくては、クローバル化の時代は生き残れない。
5000円/60kgより安いコメが外国から入ってくるとしたら、一番最初に中山間地は過疎で荒廃してしまうだろう。
明治大学に学んだ時、経済政策のゼミで、担当教授の唱える国際分業論に大きく反対したものだが、あれから40年近くたった今、将に国際分業と向き合うとは、改めて恩師の先見性にこうべが垂れる思いである。
「何としても ふるさと守ると クワ握る」 星辰
コメントを残す