名ばかりの管理職
辞令交付は受けるほうも渡すほうも緊張とある意味での晴れやかな時である。とりわけ一定の責任と権限を与えられる管理職への辞令は、心ときめくもので、辞令を受けた日は、早く帰宅してともに生活する一番自分に近い存在とともに喜び合いたいと考えた昔の自分の姿を思い出す。
昨年大手ドラックストアに勤める店長から「店長という管理職」の働かされ方の実態を聞かされた。「朝6時前には店に出勤し、開店前やパート、アルバイトの仕事の準備をし、開店後は店ぽの在庫管理や顧客周りで昼ごはんを食べるときもなく、パートが帰った後、経理や在庫調整でアパートへ帰るのは毎日0時を回っている。残業手当は管理職だからつかない、プライベートな時間はまったくといっていいほどなく、、同期入社の90%は会社を辞めていった」と深刻な内容であった。
先日大手ファーストフードの店長が、名ばかりの管理職を与えられ責任を持たされたのはいいが正規の就業時間で収まらない仕事を持たされ、あまりにも大変で、残業手当を出すべきだと勇気を奮って行った裁判で勝訴した。裁判をするというリスクを押して実行した彼に敬意を表すとともに、敗訴した会社の今後の人事を注目したいが、日本では世紀の変革期という名の下に、むちゃくちゃなルールが確立されつつあり、日本の真面目で互助の精神に立つ慣習に胡坐をかき、義務と権利のバランスが大きく崩れている気がして仕方がない。
日本人は働くことを美徳としてきた。働くことほど崇高なことはないと私も思って毎日を生きている。汗して働き得た金銭は大切に使おう将来に備えようと貯金をする。農耕民族であり働くことを大切にする日本人に強いのもうなずれるところだ。
平成の改革で、合衆国の自由主義をベースとし、競争と弱肉強食のルールをある大学教授が大臣になり、日本社会へ持ち込んだ。規制緩和を実行し、派遣法を成立させ、貯金する備えの心を投資する損得の心へと変えた。
結果格差が広がり、日本の誇ってきた中産階級を中心にする社会体制は崩れ、弱者と弱者地域が増え、その対策する負担のあり方が5年後の今大きな問題となっている。ホームレスが増え、親子の殺人事件が毎日報道される。貧富の差を生み、世界一or二の格差国になってしまった。私が危惧することは、弱者に陽が当てられることが必要ないといった風潮が社会に溢れはしないであろうかと言うことである。
成熟社会は何かと聞かれたら、フランス人なら、自由で平等で博愛にあふれた社会だと胸を張るであろう。
では日本人の成熟した社会はと聞いたらどうであろうか。みんな異なった答えを語りそうである。もし同じ内容の答えが聞けたとしたら、偏った意見を平気で述べる人気テレビコメンティターの語り口とそっくりの答えのような気がする。
「並び飛ぶトンボの群れは風を読む」 星辰
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