村祭りのお囃子
仕事を終えて、安曇野池田町の我が家に向かうと各町内ごとに秋祭りのお囃子の太鼓や笛、ところどころに子供たちの気を合わせる掛け声が聞こえて心地よい。
お盆が過ぎ、9月に入ると稲刈りが始まる前の秋祭りのお囃子の練習が始まる。
不思議なもので数百メートルしか離れていない町内ごとのお囃子は楽譜もなく耳から耳へと受け継がれるためか不思議とその調べはどことなく異なるし、曲目もさまざまである。
お社も諏訪神社、八幡神社、釡神社など集落でさまざまであるが、お囃子の主役は小学校高学年から中学2年生までの男子が対象で、秋祭りの日には、舞台や船といった提灯で飾られた山車の中で子供たちがお囃子を奏で、だん家の氏子達の手によっては、秋の豊作と無病息災を願って村内を回り神社へ奉納される。
歳の差がある地域の子供たちが一緒にお囃子のメロデーに気を合わせ一体になる機会は貴重である。
自然と仲間意識は生まれる。また太鼓も笛の仕方も上級生が下級生へと術べを教えていく。下級生は上級生を尊敬し、歳の上のものは年下ものを兄弟のように大切にする。これが絆の始まりである。
私の集落は、当時13軒しかなく、子供が少ないため小学校へ上がる前からお囃子に引っ張り出された。5つも年の離れた上級生はかわいがって将に兄弟のように指導してくれた。
私が先立ちのなった時、隣の集落と合わせても男子で3人であった。お囃子にならず、氏子総代の方にお願いして、女子を加えることを許していただいた。当時は浦安の舞などなく、女子も楽しそうに大きな声でお囃子をしたことを今でも思い出す。
昨今は人口が多かった町部でさえ、女子をお囃子に参加させなければならないと聞いた。子供が元気に飛び回るし集落は活気がある。子供とともに成長した自分の人生を振り返りながら、自分の住む地域にあって、感謝する心や安心安全に住みたいと目に見えないものに願う敬虔な普通の生活、普通の家族のやり取りが持つ意味をかみしめている。
身体がおぼえたことは忘れないというが、30年近くたった後に、我が子が吹く笛の調べに合わせ、笛を吹いてみると自然と調べが浮かんで来て、楽しく我が子と受け継がれるお囃子の調べを合奏したことを思い出す。
「受け継がれ 合わせる調べは 絆を創る」 星辰
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