宮澤敏文

30.43秒の笑顔

5回目のオリンピック。テレビ画像から映し出されるソチの空は限りなく青く、冷静に執念でさわやかに6名の決勝に残った選手の中に上村愛子さんがいた。

1月28日国内最後の練習の合間を見て母校長野県白馬高校の玄関で開催された壮行会がテレビカメラいっぱいの中で行われた。私も一言「20年間、世界のトップアスリートとして活躍してきたことすごいことです。悔いのないよう楽しんで」と申し上げた。後輩から送られた花束に笑顔で答えながら「納得するすべりをしてきます」としめくくられた。長野オリンピックに出場する高校生の時初めてお会いしてから、ずっといつもいつも素敵な笑顔である。そっと握手をすると小さな手ではあったが厳しい練習と家事でアスリートの手であった。

6位で決勝に進み、決勝は最初のスタート、すーと滑り出す彼女を見つめながら一緒に息を止めて滑った。ブッシュをとりわけ強化した腹筋力で前へのスピードに変え、30.43秒決勝に残ったトップ選手の中で一番速いタイムでゴールを走り抜けた。力強かった。

高校生の頃から「ゴールスピード」を気にしておられた彼女が見事に克服したそんなすごさが素人の私の眼には映った。

結果は4位。メダルには届かなかった。世界選手権で金メダルを獲得した彼女であってもオリンピックの場は別物。力いっぱいの競技を戦った選手にハグする上村さんの小柄な姿が映し出されていたが、「心からおめでとうすごかった」なせか熱いものが込み上げてきた。

今日は20年ぶりの大雪が都市部を中心に日本を襲った日、上村愛子さんの真剣勝負は幕を下ろした。

アスリートを支える体制はスキー関連が低迷し、関連企業のサポート体制が弱体化している。何とかしなくてと仲間の皆さんと意気込むのであるが。

1998年長野県でオリンピックを開催できた。その後のサポート体制は薄くなるばかりである。2018年のオリンピックはお隣韓国で開催される。コース作成にも長野県のスキー関係者が現地に出かけ指導していることはあまり知られていないが、確実に長野県の財産であると同時にこれからも維持し磨きを加えていかなければならない宝物である。

天使のような上村愛子選手の笑顔に感動しながら、愛子さんのように今後の5回も出場する選手が活躍するその時を考えるのである。

心からご苦労様そして数々の感動をありがとう。

  「空(ソチ)の青 抜ける笑顔よ 高らかに」 星辰

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