宮澤敏文

ハノイのコーヒー

ベトナム航空の397便が静かにハノイ市イ・バイ国際空港着陸態勢に入った。レットリバーが運んだ赤土の屋根と多くの池そして水田、畑には野菜が丁寧に植えられている. 

昨年日本国の援助で完成した空港は、将来のこの国の発展を教えるように大きく立派である。それにしても訪問する国の首都のある国際空港の玄関に日の丸だけが風いっぱいに受けて旗めく様はうれしいものである。この国の姿勢がうかがえる。

迎えの案内で商工省政策研究所へ向かう。整備された片側4車線の道路は、ウシが草を反芻する農地を貫き、追い越す車は皆高級車で新しい。

市内に入るとバイクの波である。命がけで道路を横断する人を気遣ううちに、商工省に着く。ベトナムは産業政策を大事にする社会主義国である。役人さんは、えらい存在であることは言うまでもない。TPPの対応など専門の通訳を交え懇談するが杭の入りが悪い。

春雨料理を中心としたベトナム伝統料理をいただく,ハノイ大学出身の案内人から役人と違った現実のベトナム情勢を聞く。農村には働く場がなく、農地の配分もうまく機能していない。都会と農村の格差は産業化が進むほど広がっている実態に興味が集まり、ベトナムのコメで製造した39度のウッカのピッチが進む。

12月ハノイ市は乾期で雨がほとんど降らない。しかし台湾国より南なのに寒い。

朝のハノイ市の散策に出るが、活気がある。細い小路は何か身の危険を感じて引き返す。

9.00農業・農村開発省を訪ねる。川上村関係者が栽培するレタス農場の説明で打ち解け、地方と地方の連携、長野県と姉妹県など紹介いただく、ベトナム国はもう少しで1億人に届き、国民の平均年齢が29歳の若い活力ある国である。「農業と労働力」がベトナムの売りではあるが、早い時期に、加工型や工業への転換がカギと研究所所長は話す。

長野県の日本酒や北アルプス山麓ブランドの「凍りもち」のお土産には農業研究者同士で話が弾む、長野県との姉妹県では64ある市県からいくつかの候補地が提案されたが既に茨城県や宮城県はベトナムに熱い視線を送っている。

軽くベトナムの伝統料理「ぶんちゃ」をにぎやかな街の食堂で頂き、タンロン大学へ向かう。ハノイ市郊外は建設ラッシュで新興国らしい。

ご主人がベトナム大使館に勤め、日本でエプソン社の援助で学んだ通訳者が待っていてくれた。副学長を始め学部長や300名を超える日本語学科の責任教授そして看護学科の教授が待機しておられた。

早速自己紹介からスタートしたが、タンロン大学は日本とりわけ、男女とも長寿日本一の長野県に興味を持たれており、是非とも看護学科と栄養士育成の交流人材づくりにわだいが集中した。 「是非とも長野県の大学と連携するシステムを創らせていただきたい」 「こちらからは2学年時に1年間日本へ生徒を送りたい」「来年3月には長野県を訪問したい」 同行した師玉さんは介護分野での企業連携を語り、農協中央会の牧島さんは厚生連の医療システムを話された。

あっという間の2時間が過ぎ、全員疲れ切ってはいた。現地で気持ちをストレートにぶつけ合ったがあまりの充実した進み方に、笑顔が飛び交いながら、少し興奮してホーチミン市への空港へ向かった。

そこで世界生産額2位であるベトナム、その定番のベトナムコーヒーを口にした。ミルクが入ってコクのある濃厚なベトナムコーヒーがまろやかに広がった。初めての味、わずかばかりの空白な時をコーヒーがつつくでくれた。       来てよかった。

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