宮澤敏文

鶴岡の

「こんなの難しい論語の素読を小学生が学んだのか」思わずうなってしまった。

山形県鶴岡市、藤沢周平文学に登場するこの地は、自ら学び、人が連携し合って真理を導きだそうとする気風が今も残っていた。

雪国の南魚沼市で国際大学、北里看護専門学校、新潟大学付属基幹病院を中心に、まちづくりを日本版CCRCの手法で、平成26年から抜かりなく創造しようと準備するコシヒカリの里の情熱に感動しながら、魚沼産の新米を「本気(まじ)丼)」でいただき、田中角栄さんの銅像に会釈しながら新潟駅で乗り換え、約2時間。初めてうかがう庄内平野は、さすが日本を代表する水田地帯、限りなく続く整備された田を見つめ、冬は暗く淋しい日本海の波間に気をやりながら着いた鶴岡駅はもう真っ暗であった。

この時期の朝は遅い。ようよう明るくなる珍しく青空の覗く、手袋をし、いつものように寒さが心地よい外に出る。

城下町は雪の街特有でゆったりとしている。

信州松代藩主からこの地に来て、明治までこの地と共に生きた酒井氏の城跡が庄内神社となり、その脇に藩校として5歳から20歳を越える若者が学んだ「致道館」は、静まりかえり、ボランティアの方々の朝掃除を受けていた。

孔子の論語を大切に徂徠学を基本しと「それぞれの個性を伸ばし、自ら考え学ぶ精神」を200年にわたって続けたられた。その横隣りに慶応大学のバイオ研究所がある。

13年前、将来を思い大金を投資して慶応大学に来て研究基地としてもらうための環境を整えた。そして近年、応用や活用を図るメタボロームクラスターを駅の南に増設し、その後現在も3.5億円づつ10億円程を10年にわたって鶴岡市、山形県、慶応大学で拠出している。

その研究棟を訪ねると学生や企業者がコラボして、メタボロームと向き合っており、世界が注目する成果をいくつも挙げているのには驚く。

「高校生の感性は絶対に大切にすべき」と慶応大学の研究所長は、地元の高校生にバイト代を払って、この研究所に通い研究を率先する環境を整えている。それらの高校生は自分で考え、研究し、慶応大学へ進学し研究者人生を続けている者もいる。この地に新たな可能性を生み出しているのである。

行政の熱っぽい説明と平常心の大学からの現状取組をうかがうと、首都圏から遠く離れたこの地で「奇跡を起こせたのは、人の決断にあり」と改めて知らされる。

今も続いているわけであるが、かかわっきた人々の本気に敬意を送りたい。

案内してくれた大学の担当者は「このような遠い東北の地に来るとは思っていなかったが今鶴岡の人と結婚し、生活しているとこの地の良さ、不便さを何とか克服しようとする行政関係者の踏ん張りが嬉しくなる。今二人の子供にも恵まれ仕合わせです」と話される。

産業分野だけでなく、米の単作地帯だった日本海側のこの地域、食味がコシヒカリより優れていると評価される「つや姫」の開発にも研究所が関わっている。

一つの学び、大学が地域の新たな可能性を生み出す元となる訓を福島までの5時間近い長い電車の中で反芻する。

「明日見つめ 命の素を見つめつつ、学ぶ子たちの 声を聴く」 星辰

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