宮澤敏文

ふるさとの踏ん張り

長野県北西の県境小谷村に北野という集落がある。過疎の集落で、80歳に近い人が若手の働き盛りの集落である。しかしこの80歳近いは人たちが元気である。杜氏に出稼ぎに行ったり、奥山を駆け巡り、質のよい山ぶどうを見つけ里に移したり、山の湧き水を使い、山女を飼ったり、いつ伺ってもこの人たちからは、明日の元気をいただく。

その一人大田喜八郎さんから、「春に一緒に提案したふるさときのこ体験のツアーの準備ができた。来て指導ほしい」との電話をいただいた。いつもこちらが教えていただいているのに、その日は、5年間で9.2%人口が減少した小谷村を森林セラピーや湯治などの健康づくりと陸上やフットサルなどの合宿を受け入れのスポーツで、低迷する小谷のスキー観光に変わる地域おこしをしよう。文科省の課長さんや県サッカー協会長などキラ星の皆さんが審議する会議の日で、熱心な討議終了後みなさんも誘って伺った。

春、子供たちや地域の方々で植えた「なめこ」が黄金色で見事に輝き、竹棒にさした山女が焚き火の周りから香ばしい。早速の北野集落の皆さんのもてなしのきのこ汁と底抜けの笑顔で、日ごろの疲れと肩の力が抜けていくようだ。

「昔は、山と向き合っていれば暮らしていけた。それがだめになった後は、建設工事に出て生計を立ててきた。ところがまだまだ道も狭いし、下水などとても先の先、山も崩れているにもかかわらず社会資本は整備されたといって公共事業は減少の一途。県境の過疎に住む人の生活など解らない役人や政治家のおかげで職を失い、村人は一人減り二人減りしてどんどん寂しくなっていく、このままでは、俺たちの次の代で集落は終わってしまう。何とかして活力を呼び戻そう」と会長の小林さんや太田さんから相談があって、「深山北野の里づくり」にともに汗してきた。

「栂池や乗鞍に泊まった人たちが森林に入って、山菜を取ったり、きのこを取ったりして、深呼吸しながら、元気を取り戻してくれたら」「体験料をとっていいかしら」「そのときには小谷の郷土食でもてなしてくださいよ」いくつもの提案が懇々と湧き上がり話は弾む。しかし本当にこの人たちはづくを惜しまない。すごい方々ばかりだ。

「森林の持つ効果を再認識しよう」と国では森林セラピーに注目している。長野県では6町村が指定されたが、小谷村もその一つである。

「森林セラピーはあくまでも療法である」と安曇総合病院の谷川副院長は独自の研究を続けておられるが、私は昔からの小谷湯治文化に注目して、これらを総合的にプロセス化して全国へアピールしたらと提案し、関係者で温めて合っている。すごい人が関わっていただいているので楽しみながらすすめている。この「深山北野の里」も含め、それぞれのいいものを繋ぐネットワーク創りが課題であろう。

数百年は経つだろう「ならの巨木」がいき続ける北野集落の体験の森を下りながら、日本人の心のふるさと北アルプス山麓地域の成熟社会での生き残り方を考え、結果を出さなければ、これら里は確実に終わる。

  「しわいっぱいの 笑顔のもてなし いつまでも」  星辰


宮澤敏文,あぜ豆を植える心,,01/01/2008 10:27:34 AM,

大晦日以来の大雪が、北アルプス山麓を覆い、森羅万象のうちに2008年が明けた。

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