長野県知事 田中康夫殿


2003年予算編成にむけた

「雇用対策について」提言


長野県議会県民クラブ



O02-11-12

県民クラブ

2003年予算編成にむけた

「雇用対策について」提言

I.雇用・就労観の変革

II.雇用対策に関する提言

1.新年度予算では、雇用創出・失業率引き下げを主目標として据え、雇用届出量を具体的に明示すること。

2.新たに「地域雇用創出・安定プラン支援基金」を創設すること。

3.長野県版「雇用のためのニューディール政策」を確立すること。

4.社会部「雇用対策室」を「雇用対策課」へ昇格すること。

以上




雇用対策について(2003年予算編成にむけて)

I.雇用・就労観の変革

終身雇用・年功賃金という目本型雇用慣行から「個性や能力を十分発揮し、豊かさを実感できる」多様選択可能社会の確立が求められている。県民のこうした雇用・就労感の変革に向けた社会的合意形成が必要となってきました。

併せて国のデフレ対策は、目本経済の骨格をなして来た銀行融資や企業経営、就労形態を根底から変えようという圧力が相当強く、企業倒産や失業のさらなる増加を伴うことは必至で、県民も相当な痛みを覚悟しなくてはならない内容であります。とりわけ中高年層には、「厳冬」の時代が訪れようとしています。

こうした雇用・就労観の変化に対応するためには、各人の能力と努力に応じた多様な挑戦が可能な移動・流動性の高い活力ある社会の実現を目指した雇用政策全体の変革に取り組まねばなりません。

今後の雇用対策の視点

1.実態に即したミスマッチ対策

2.中高年には第一に「雇用維持」

3.学校教育への雇用・就労観の導入

4.多様な働き方で就業率アップを


U.H15年雇用対策に関する提言

1.     雇用総出量を具体的に明示することを提言します。

経済運営の目標が不透明で多くの県民が不安を抱く局面では、能力開発を重視した積極的労働市場政策を展開する必要があり、新年度予算編成では雇用創出、失業率引き下げを主目標として据え、雇用総出量を具体的に明示することを提言します。

2.新たに「地域雇用創出・安定プラン支援基金」(仮称「元気出せ基金」)の創設を提言します。

具体的な雇用創出は、地域の産業政策と密接に関係しています。そのため地域における政労使や労使団体の問で行われている雇用創出の取り組みを支援することが重要です。

そのためには、国の「緊急地域雇用創出特別交付金」等、既在の財源とは別に、地域における政労使の雇用創出・安定プランを支援する性格を明確にし、配分についても効果的なプランを評価し、弾力的に行われる仕組みを入れた地方の柔軟な取り組みを支援する。「地域雇用創出・安定プラン支援基金(仮称)」を一般財源で創設し、地域の関係者の工夫が生かされる雇用創出事業を大規模に進めることを提言します。

[基金を財源とした支援策](県単独の基金.初年度10億円援助)

民間の新たな雇用を生み出すための支援

企業等雇用創出支援奨励金事業

@中小企業雇用創出支援奨励金事業

雇用創出のために国の設けた特別奨励金は45才以上を対象としているため、学校を卒業しても仕事が見つからない人への対策がない。また、こうした人たちが求めているのは臨時雇用ではなく正規の雇用であるがその対策も不充分。従って県としてこの部分を補完をする必要がある。

     若年層の新規雇用者や解雇・倒産等非自発的理由に失業を余儀なくされた若者等を雇用した事業主に助成(30万円/人)15才〜45才未満への適用

A新規・成長分野雇用創出奨励金事業

国の設けた特別奨励金は30才〜60才未満を対象としているが、これを若年層の新規雇用(高校卒18才〜30才未満)に更に対象分野の範囲を特化させることにより、(コールセンター、創造法・経営革新支援法の認定企業)若年層の新規雇用に助成し、新分野進出企業における事業の円滑化、雇用機会の創出を推進することを目的に事業主に助成(70万円/人)

B研修経費他柔軟に対応を

民間企業・団体が新たな雇用を生み出すために努力している。新規雇用者のスキルアップに係る研修経費他柔軟に対応する

3.業者の生活支援と再就職支援を柱とした「新・緊急雇用対策」として長野県版「雇用のためのニューディール政策」確立を提言します。

2002年度雇用対策事業は、従来の雇用対策が継続されているにすぎず、現在の厳しい雇用・失業情勢に対して極めて不十分なものにとどまっております。

2002年10月ハローワークの前で行った失業者に対する聴き取り調査では、

@日常の生活費が足りない。A国民年金や健康保険負担が重い。B失業保険が切れたら生活できない。C自分の健康や精神的ストレスがある。など失業者の困難な実態が浮き彫りになりました。

こうした厳しい雇用情勢では、@雇用の安定に対する支援。A非自発的な失業者(自営業廃業者含む)や学卒者などの(再)就職支援。B長期失業者の生活支援対策などを講じる必要があります。

とりわけ、長期失業者の再就職のために能力開発を強力に進める仕組みをつくることは、失業率を引き下げるために不可欠です。

従って、新年度予算編成に当たって最も必要なことは、まず本年度の対策の検証です。繰り返し、雇用創出などを掲げてきたものの、手応えは乏しく「緊急地域雇用創出特別交付金事業」も、正式雇用を広げるには至っておりません。「ばらまき行政」との批判もあるわけですが、改廃すべきものはないか一つ一つ見極めをすると同時に、どの程度効果があったのかを明確にする必要があります。

そして、現在失業中の人たちなど利用する側の声を充分に聴き、大きく変革しつつある雇用・就労観と「厳冬」の時代を迎えた中高年層を意識しつつ、県として新年度に対応する「新・緊急対策」として「長野県版・雇用のためのニューディール政策」の確立を提言します。

長野県版「雇用のためのニューディール政策」策定にあたっては、本年度の対策の検証を充分に生かし、次の各事項を繰り込まれることを提言します。

ニューディール政策とは、イギリス・ブレア政権が1998年4月より実施しており、職業訓練・就業促進を目的とする政策で最初は若年失業者や長期失業者を対象に開始されたが、その後、対象範囲を障害者、一人親、失業者の無収入の配偶者、高齢者に順次拡大してきた。

ニューディール政策が実施されてから2001年11月までに若年失業者向けプログラムに参加した延べ人数は約37万人、その内約35万人が就職し、このうち約27万人が継続的な職(13週間以上)を得ている。

@雇用・就労観の改革への対策

(1-1)雇用のセーフティーネットの拡充

国の「緊急地域雇用特別交付金」「新規・成長分野雇用創出制度奨励金」「緊急雇用創出特別奨励金」等、様々な助成制度の効果的な活用と併せ、県として、これらの制度を更に補完することにより、雇用のセーフティーネットを拡充する。すなわち、単なる「セーフティーネット」ではなく、再挑戦を可能とする「トランポリン」としての役割への発想の転換により、セーフティーネットに長野モデルを構築すること。

(1-2)地域の実情に根ざした職業紹介の推進

地域性を考慮した上で必要な職業紹介について、個一性や能力を発揮できる仕事を見つけられるよう、地方事務所に地域の学校と仕事を結ぶ「キャリアセンター」を設置し県と地域の一体化を計ること。

(1-3)キャリアカウンセラーの拡充

雇用のミスマッチ解消のため、求職者の職業選択や能力開発などの相談に乗るキャリアカウンセラーについて、能力要件を明確にし、資格制度を創設する。そしてハローワークのみではなく県が主体性をもって企業や学校などへの導入を促進すること。

(1-4)パート労働の待遇改善

多様な働き方ができる環境の整備という観点から、パート労働者の「同一労働、同一賃金」へ均等待遇原則を県として積極的に取り組む。

また、短時問正杜員制度の導入などの整備を図り、ワークシェアリングの推進を計ること。

(1-5)教育訓練制度の拡充

国の「教育訓練給付制度」の給付要件を県として補完をし、フリーターの就業や子育てを終えた主婦、雇用保険の給付期問切れになった失業者や自営業及びパート労働の失業者が再就職するにあたっての能力開発支援を積極的に行うこと。

中高年の職業経験を伸ばし、生かす機会として、高校や専門学校における、専門的かつ実践的な職業能力向上のための教育訓練の拡充を計ること。

(1-6)NPOを活用した雇用の創出

NPOの設立や活動のしやすい環境整備につとめ、NPOによる雇用の創出に力点を置き、行政からNP0への事業委託や行政とNP0の連携を推進すること。

(1-7)多様な働き方を選択できる環境整備

「労働者派遣事業制度」「有期雇用契約制度」等の現有制度について、労使の契約上の選択肢を増やし、多様な働き方の環境を整えるため、抜本的な見直しを国に働きかけること。

A十年層の失業者・無業者対策

働く意欲があるのに雇用されない若年層が自分の適性を発見し、それに適合した職種に就業できるように、インタ』シップや職業訓練の充実などの施策を充実すること。

(2-1)本格的なインターシップの促進

学生が企業等において自らの専攻、将来のキャリアに関連する就業体験を行うインターシップの役割りを、学生の就業支援の観点だけでなく、新しい産学連携の産業構造を担う人材育成として、質量ともに飛躍的な実現を計ること。

.地域の経済団体や農業団体などと連携し、インターシップの受け入れ先を中堅企業や農家に広げ、多様な職種を選択肢とした企業開拓及びマッチング事業を支援すること。

また、インターシップ受け入れ企業等については、負担軽減のための財政的な支援を行うこと。
大学・高校・学生・企業が気軽にインターシップに関して相談できる総合窓口を設置すること。

.企業側に対し、研修内容、待遇等に関する事前通知を義務付け、学生が安心してインターシップを行えるようガイドラインを確立すること。

.小中学生に対する職業に触れる機会を充実するため、実際に仕事をしている姿を生で見て話を聞く機会や、親の職場見学、職業人の訪問取材等の実施等体験機会を充実すること。

.職業高校ではインターシップ制度を活用し、社会経験・就業体験を授業に連動させた、カリキュラム作りを充実させること。

(2-2)フリーターの求職支援

自らが望んでフリーターを選択した者はともかく、意欲あるにも関わらず安定した職業先を確保できない若年層に対し、就職支援のための施策を実証する。

.一方的な価値観を押し付けたり、誘導したりするのではなく、フリーター経験をその後の就職活動に活かせるよう、若年層の職業意識に啓発を促進し、就職を支援するため、若年層同士の自助グループや、企業OBとの交流サークルなどのNP0の設立支援をすること。

.若者向けの求人情報の閲覧や職業相談のカウンセリングを行う「ヤングハローワー(30才未満対象)」が全国に4ヶ所あるが、果独自で若年失業率の高い地域に設置すること。

.学卒就職者や早期離職者をはじめとする。若手失業者やフリーターと企業が求める若手人材の要求水準とのミスマッチを解消するため、若年者トライアル雇用制度(短期間の施行雇用を実施する制度)の普及に努力すること

.学卒者が3年以内に離職する若年者が極めて多く(7:5:3)不安定職業若年層を生み出している現状を改善するため各学校が卒業後1〜3年間の就労状況を把握し、職労相談や職業紹介を継続する体制を整備すること。

.不安定な雇用事情は杜会的な問題であり、一番苦しいのは若年層です。若年者の就職活動を支援するため、若年労働者のメンタルヘルス向上を含めた「就労予備校を地方事務所単位に設置すること。(履歴書の書き方や面接の受け方、自己PRの方法などを指導、併せて若年労働者のメンタル面の支援)

B中高年齢者の雇用の安定

(3-1)失業者の生活支援

.非自発的理由の場合の失業手当を最低でも210目以上にするよう国に働きかけること。

.職業訓練延長給付の拡充を計ること。

ハ.失業者の社会保険料減免措置を計ること。

.失業者の住宅ローン減免措置を計ること。

.失業者子弟の教育授業料の減免措置を計ること。

(3-2)再就業のための教育機関として職業高校の活用

再就業のための教育訓練の場として、職業高校の土・目・夜間の開講を推進する等、職業高校の位置付けを見直し、地場産業や実際の職業に直結する技能を取得するための機関として重視し、その活用を計ること。

(3-3)ワークシェアリングの推進

県職員の有給休暇の完全消化を実現することにより、有給雇用労働の総量を多くの人で分かち合う「緊急型ワークシェアリング」を実現すること。

連合長野・県経営者協会が進めているワークシェアリングの議論促進の支援拡充を計ること。

(3-4)高齢者雇用

シルバー人材センターの位置付けを多様化し、介護保険や医療保険の個人負担の軽減につながる「ボランティア地域マネー制度」などを導入できるような環境整備をすること。

(3-5)「体験型の職業訓練の充実事業」(社会部)

国の制度では対象とならない雇用保険の給付期限切れとなった30才以上の失業者が自営業又はパート労働の失業者向けの事業であるが、訓練中における生活補償が全くないため、事業として全く機能していない。新年度予算化を計り心通う事業とすること。

Cユニバーサル社会(共生社会)の実現

(4-1)障害者雇用の推進

障害者雇用促進法に基づいて、企業グループによる障害者雇用率についての理解と普及を図り、一層の障害者雇用を推進すること。

更に障害者雇用主に対して、税法上の優遇措置の補完などの支援を拡充すること。

(4-2)雇用と福祉の連携による障害者に自立支援

地域の雇用・福祉・教育等の関係機関が連携し、障害者に対して、日常生活上の相談と就学面での相談等を一体的に行う支援事業を充実すること。

特に養護学校を核とする若年障害者雇用を創出する体制を創設すること。

また、授産施設を始めとする障害者職業能力開発体制を充実させると共に、障害者の就職先に職場適応援助者(ジョグコーチ)を派遣する事業の拡充を推進すること。

(4-3)「障害者就業・生活支援センターの設置事業」(H14.社会部)の内容を検証し、早期軌道化に努力すること。

(4-4)「精神障害者の雇用創出事業」(H14衛生部)、H14実績はゼロ。実効性を再検証し、心の通う事業化に努力すること。

D雇用につながる行政サービスの維持'拡充

(5-1)行政公共部門での雇用拡大策として、地方機関や教育現場、福祉現場を中心に、これまで対応が十分にできなった課題等を抱えている県の部署に職員を増員配置すること。

4.社会部「雇用対策室」を「雇用対策課」として機能拡充を提言します。

雇用対策室の職務は関係機関との連携のもと、現下の厳しい雇用情勢や産業・就業構造の変化に対応して、雇用の安定・創出を図ることにあります。

しかし、現労働市場の多様な二一ズに柔軟かつタイムリーに対応するためには雇用対室の「課」への昇格と人員増を含んだ内容の充実を計ることが急務です。

労働市場の実態把握は労働局からの情報によるところが大であり、県独自での実態把握機能は皆無であります。その上、雇用対策室設置当初とは、労働市場雇用実態には、急激な変化があり現体制でのそのその急激な変化への対応には無理があります。

 今日的な急激な労働市場変化への対応に現体制では県としての主体制がほとんど発揮できておりません。

 民間の職業紹介事業や人材派遣事業とのコンタクトによる再就職支援を援助する機能の充実。また、公共職業安定所や県立技術専門校等との総合的な調整役割を担う機能が雇用対策室には求められており、官と民の役割分担の見直しや職業紹介だけでなく、商工部との連携による起業の促進。教育現場との連携による若年層の雇用定着対策等々、過去に例を見ない失業実態の中で「雇用対策」は今や県行政の中では最も重要な政策であるだけに、この際「雇用対策課」を設置し雇用対策に万全を計ることを提言します。


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